大切な着物の染み抜きは出来るだけ自分でやる?それともプロのクリーニングで汚れスッキリ!?

着物で出かけたときの食事中、うっかり着物にシミをつくってしまう事ってありますよね?雨の日にタクシーを降りた場所が水たまりで、着物の裾に泥がはねてしまうというアクシデントもよく起こります。女性の場合は、着物の襟元にファンデーションや口紅などの化粧品がついてしまうことも!

衣類についた汚れの対処は、とにかくスピード勝負。着物についてしまった汚れは長時間放っておくとシミが黄変となり、完全に落とすことが更に難しくなってしまいます。

茶道や華道、着付けの先生など、普段から着慣れている方は着物専用の染み抜き用洗剤を携帯していることも多いようですが、めったに着物を着ない方がシミ取り剤を持ち歩いているケースは少ないですよね?

大切な着物の染み抜きはプロに依頼するのが確実ですが、いずれにしろ応急処置は有効です。それに、着物の生地や加工にもよりますが、軽いシミや小さなシミの場合には自分で染み抜きできる場合もあるのです。

汚れには「水性」「油性」「不溶性」と大きく3種類があり、それぞれの対処法があります。

ここでは、着物についてしまうことの多い汚れへの応急処置や、ご家庭でできる染み抜き方法をご紹介します。

着物についた醤油やジュース等「水性のシミ」は落としやすい!?

着物での外出で、うっかり飲み物をこぼしてしまったり、食事中に醤油がはねて着物の袖にシミをつくってしまうことは良くありますよね?

実は着物に限らず、衣類についてしまうシミで最も多いのは、飲み物や醤油などの液体系の汚れによるものなのです。これらの汚れは水に溶ける「水性(水溶性)」なので、ご家庭での染み抜きも可能です。

醤油やジュース等が着物のついてしまった場合、すぐに応急処置をすれば問題ありません。まずはウエットティッシュや濡れタオルでシミ部分を軽く押さえ、水気を吸い取りましょう。この時、こすったり強く押し付けてしまうと生地が傷んだり、色素が繊維に染み込んでしまうので注意が必要です。水分によって着物のシミを移動させるイメージで、濡れタオルをのせるだけで大丈夫です、

応急処置をした後は、できるだけ早く染み抜き処理をしましょう。醤油のような水性の汚れは水だけで分解できるので、すぐに染み抜きできれば洗剤を使用する必要もありません。基本の染み抜きの手順は、

1. 着物の醤油のシミのついた部分に「あて布(タオル等)」をあて、着物を裏返す

2. 水で濡らした歯ブラシで、シミの部分を裏側から軽くトントン叩く

3. 着物の汚れが下のタオルに移ったら、汚れが衣類に戻らないように「あて布」を移動させながら小刻みに叩き続ける

染み抜きの大切なポイントは、

・汚れは決してこすらず、浮き上がらせてあて布に移動させる

・落とした汚れが戻らないようにする

です。

他にも水性の汚れには、ソース・お酒・お茶・コーヒー、水性インク等があります。

関連記事:「落としきれない醤油のシミはこんな染み抜き方法で!でも固定化してしまったら?」

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着物にこぼしたコーヒーの染み抜きはミルク入りだと難しい

コーヒーのシミも「水性」の汚れです。水性のシミは落としやすいのですが、一度乾いてしまうと落ちにくくなってしまうので、できるだけ早く洗い落とす必要があります。醤油もそうですが、コーヒーは色素が強いので、早めに落とさないとシミが残ってしまいます。もし外出先ですぐに処理できなかった場合には、家に戻ってから迅速に染み抜き作業を行いましょう。

色素が強い水性汚れの染み抜き

少し時間が経った後に染み抜きする場合は、水ではなく「食器用中性洗剤」を15倍ぐらいに薄めた液を使用するといいでしょう。小さいシミには綿棒を使用するとシミが広がりにくいです。染み抜き作業が終わったら、霧吹きで水を吹きかけてタオルで挟み込み、着物に洗剤が残らないようにしましょう。

ミルク入りのコーヒーの染み抜き

「コーヒーには必ずミルクを入れて飲む」という方も多いでしょう。
ブラックコーヒーは水性汚れになりますが、カフェオレやカフェラッテの場合には汚れに脂肪分やタンパク質が含まれています。タンパク系の汚れを最初にお湯で洗うと、乳脂肪が凝固して汚れが落としにくくなってしまうので応急処置のときには注意しましょう。

着物についた汚れが「水性+油性」の場合、初めに油性汚れを落としてから水性汚れを落とします。

タンパク系の汚れには、直接シミ部分に食器用中性洗剤をたらしてトントン叩いて落とします。それでも落ちない場合には「酵素系の洗剤」をシミにつけ、蒸しタオル等で温めてタンパク質を分解させて汚れを落とすという染み抜き方法もあります。

油性汚れには、ガーゼ等にベンジンやリグロインを含ませてトントン叩いて染み抜きする方法が有効です。

油性のシミがとれた後には、中性洗剤を使って水性のシミを落としていきます。

ただ、洗剤やベンジンを使用した染み抜き方法は、慣れていないと逆にシミを広げてしまったり輪染みをつくってしまう可能性があります。

衣類タグがついた洋服の場合は、素材や仕立て等の情報が明記されていたり、洗濯表示を見ながらお手入れや保管方法を確認することができますが、着物の場合はそうもいきません。大切な着物の美しい色や柄が損なわれるのが不安な場合には、初めからクリーニング専門店の染み抜きサービスを利用するのが一番です。

関連記事:「綺麗に落ちないコーヒーの染み抜きは、ミルク入りだとさらに大変!きちんと染み抜きする方法」

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白い着物についた赤ワインの染み抜きはプロにお任せするのが一番!

着物を着て出かけるシーンでは、フォーマルな場所で食事をすることも多いですよね?成人式の後のパーティで慣れないワインを飲んでいて、つい振り袖にこぼしてしまった!というのも「あるある話」です。

種類で言えばワインのシミは水性汚れなのですが、赤ワインとなると染み抜きはかなり厄介です。赤ワインには「タンニン」や「アントシアニン」が多く含まれていて、この赤色の色素が繊維に染み込んでしまうと、着物に濃いシミが残ってしまうのです。

着物についた赤ワインの染み抜きは、専門家の技術にお任せすることをおすすめしますが、いずれにしろ応急処置は必要です。ワインのシミは素早く対処しないと、どんどん酸化して落ちにくくなってしまうのです。醤油汚れの対処と同様に、濡れタオルや食器用中性洗剤などを使って汚れを落としましょう。色素がなかなか落ちない場合には、砂糖や果汁が含まれていない炭酸水で汚れを浮かせる方法もあります。こぼしたワインが大量の場合には、着物に塩を盛ってワインを吸わせる方法が有効です。

色素系のしみ抜きにオキシドールを使用するテクニックもありますが、着物の場合は美しい風合いや柄が損なわれてしまう危険が高いので気軽に薬品は使えません。大切な着物は染み抜き技術に長けた職人さんに依頼して、ワイン事件前のような仕上がりで戻ってくることを願いましょう!

なお、着物についてしまった紅茶やお茶のシミも、タンニン系の汚れになります。

関連記事:「なぜ落ちない!!頑固なワインのシミを「なかったこと」にする染み抜きの極意」

食べこぼしの油性汚れにはタンパク系やタンニン系があって染み抜きが複雑

食事や飲み物での水性汚れの次に多いのが、脂分を含んだ食品の食べこぼしです。

通常「油性汚れ」には、中性洗剤やベンジン等を使用して染み抜きしますが、同じ油性汚れでも水分が入り混じっていたり、タンパク系やタンニン系の汚れが混じっていたら、その対処法は異なってきます。

油性の汚れは水洗いだけでは落ちないので、油を用いた洗剤やアルコール等を使って染み抜きします。マヨネーズやバター、チョコレート等、油性と水性の入り混じった汚れがシミになってしまったときには、ベンジンを使用して油性汚れを落とし、その後に薄めた中性洗剤を使用して水性汚れの染み抜きをします。

ここまで紹介してきたように、タンパク系の汚れには酵素系洗剤、タンニン系の汚れにはオキシドールが効果的ですが、素人が着物の染み抜きをして失敗した!という事例は多いです。失敗した後にクリーニングに出すと、洗い張りや仕立直しが必要になり染み抜き価格が跳ね上がってしまう可能性があります。中には染み抜き専門店でも対応できないケースもあるので、自分でこれ以上は落とせないと思ったら、なるべく早く職人さんに依頼してきれいに染み抜きしていただきましょう!

関連記事:「しつこい油汚れの染み!家庭で簡単に出来る染み抜き方法を解説」

関連記事:「ご家庭でも簡単に落とせそうなチョコレートのシミは「完全な染み抜き」が難しいシミでもあります」

化粧品やマジック等の油性染みの応急処置では「触らない・濡らさない」

女性が着物を着て出かけるときには、化粧をしていることが多いものです。特に意識をしていなくとも、ファンデーションや口紅などは自然と着物の襟元や袖口についてしまいがちです。結婚式などに参列した際に受付で記帳をしていて、着物の袖口をマジックで汚してしまう場合もあります。

口紅やマジック等のシミは、食べこぼしと同じく「油性」の汚れです。少し異なるのは、このタイプの汚れは着物にベッタリと付着してしまうことが多いので被害を最小限にするために、応急処置では決して「触らない」「濡らさない」という点です。ただし、「帰宅したら着物を脱いで早めに対処する」というのは他のタイプの汚れと同様です。特に、ファンデーションには着物の地色を漂白してしまう成分が含まれているので、絶対に長時間シミを放置しないようにしましょう。

着物についた口紅やマジックの染み抜き方法は、ミルク入りコーヒーや食べこぼしのときと同じです。ベンジンや中性洗剤をひたした歯ブラシやガーゼを使用し、汚れた部分をこすらずに軽く「トントン」と叩きながら、下の布に汚れを移してシミを落とします。

このタイプのしつこい油性汚れは他にも、クレヨン、朱肉、ボールペンの油性インク等があります。

関連記事:「うっかり付いたボールペンの染みは落ちない!インクの染み抜きはプロの方法におまかせください!」

血液などのタンパク系の染み抜きではお湯の使用は厳禁!

血液の染み抜きは少し大変です。もしも着物に血がついてしまったら、できるだけ早く応急処置をしましょう。血液は「水溶性」ですが「タンパク系」の汚れなので、血のついた部分を石鹸や中性洗剤を使って洗い流す方法が有効です。タンパク系の汚れはお湯で洗うと固まって落としにくくなるため、必ず水で作業しましょう。

血液が着物についた時の染み抜き

カフェオレの染み抜きで少しご紹介しましたが、着物についたタンパク系の汚れは、応急処置をしてもシミが残ってしまう場合があります。洋服についた血液のシミは、タンパク質を分解する「酵素入りの洗剤」や「酸素系漂白剤」、「オキシドール」を使って簡単に落とすことが可能なのですが、デリケートな生地の着物だとそうもいきません。下手に自分で染み抜きを行うとシミが落ちないどころか、大切な着物が色落ちしてしまったり生地を傷めてしまう可能性があります。更には時間が経過すると血液が凝固して色素が着物の繊維まで入り込んでしまうので、そうなる前に着物の染み抜きを取り扱っているクリーニング店に依頼することをおすすめします。

タンパク系のシミは血液や牛乳の他にも、汗、卵、肉汁、母乳などがあります。

お宮参りなどで着物に赤ちゃんのよだれや母乳がついてしまった場合も、血液と同様の方法で対処しましょう。

関連記事:「血液のシミはタンパク系なので染み抜きが大変!うっすら残ってしまう血液シミを綺麗に染み抜きするには?」

着物についた汗ジミのお手入れ方法

ここまでご紹介してきた染み抜きは、いわゆるアクシデントで着物を汚してしまった時の対処法でしたが、汗というのは着物を一回着るだけで付着するものです。汗汚れは目に見えなくとも、放置しておくといずれ黄ばみになってしまいます。夏場などで大量に汗をかいた場合には、まず応急処置としてタオル等で水気を拭き取っておきましょう。

シミを防ぐためには、着物を脱いだ後に「汗抜き」という作業をする必要があります。たとえ洗える素材のものであっても、着物は着る度に洗うものではありません。使用した後には汗のシミが気になる部分に霧吹きで水を吹きかけ、乾いたタオル等でおさえて水分を取り除きましょう。着物にカビが生えることのないように、汗抜きの後には風通しの良い場所でしっかりと陰干ししてから保管しましょう。

泥はねでできた着物のシミは比較的落としやすいって本当?

雨の日に着物を着てお出かけして、着物の裾に泥はねのシミができてしまうこともありますよね?

泥はねは「不溶性」の汚れです。不溶性のシミは水にも油にも溶けないので落ちにくいシミだと言われますが、泥はねの場合は比較的簡単に落とすことが可能です。

ただ、大切なポイントは、他の種類の汚れのように水で洗い流す応急処置をしてはいけないということです。そして、濡れている状態の不溶性の汚れを触ると、着物の繊維に色素が入り込んでしまいます。ですから、濡れた状態の泥汚れには絶対に触らないようにしましょう。

着物についた泥が乾いた後には、まず柔らかい布で汚れを拭き取ります。その後に手で軽く揉んだり、歯ブラシを使用してシミの部分を払うように動かして丁寧に汚れを落とします。

通常、不溶性のシミは汚れを落とした後に、台所用や洗濯用の「弱アルカリ性洗剤」を使用して染み抜きをします。木綿の着物でしたら固形石鹸や歯磨き粉を使用しての染み抜きも可能ですが、着物が正絹の場合などはやめておいた方がいいでしょう。すぐに取れない泥染みは専門店に依頼することをおすすめします。

頑固な不溶性の染み抜きは着物クリーニング専門店へ

不溶性のシミの原因は、泥はねの他にも墨汁、香水、ガム、接着剤、サビ、ボールペンのゲルインク等があります。サビや接着剤などの固形汚れは、乾いた汚れをブラシで根気よく落としていく方法が基本ですが、着物の場合は生地が傷んでしまうので十分に気をつけましょう。

着物に墨汁がついてしまった場合には、まず濡れタオルで軽く押さえて水気を吸い取りましょう。その時にあまり強く押し付けすぎると墨が繊維に染み込んでしまうので、注意が必要です。墨は乾くとニカワの成分が固まりシミ抜きできなくなるので、なるべく早く対処しましょう。着物の生地や加工によっては中性洗剤で丸洗いする方法もありますが、大切な絹の着物の場合は着物の染み抜きを専門に行っているクリーニング店に相談した方が無難です。墨汁汚れは薄めた中性洗剤を含ませた布などでたたいて落としてから、霧吹きで水をかけてぼかすのが基本ですが、シミが広がってしまうとその分染み抜き料金もかかってしまうので注意が必要です。

関連記事:「家庭で行う「シミ抜き」でシミ落ちて生地ボロボロということも!?知っておきたい知識とコツ」

ここまで着物を着た様々なシーンでできてしまうシミの応急処置やご家庭でできる染み抜き方法をご紹介してきましたが、汚れの種類によって染み抜き方法や使用する薬剤が異なります。着物の生地によっては、通常の染み抜き方法を行うと繊維を傷めてしまったり、色抜けが起きてしまったり、輪染みをつくってしまったりと、大切な着物が台無しになってしまう可能性があります。

酷いシミや広範囲のシミ、時間が経ってしまったシミ等、自分では落とせそうにないシミは迷わず和服専門のプロに依頼することをおすすめします。

和服以外の衣類は宅配クリーニングプレミアムにおまかせください。